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執筆者の写真kondounagi

他専攻からプログラムに参加してみて


専門分野がブロックチェーンとは直接関わりのなかった大学院生から、本プログラムに参加した感想を頂きました。



1. 自己紹介

東大の理学部物理学科の卒業生で、今は東大大学院の情報理工学系研究科 創造情報学専攻で量子計算と機械学習の関係について研究している修士課程学生です。


2. プログラムを知ったきっかけ

Twitterで流れてきたので応募してみました。


3. ブロックチェーンを知ったきっかけ

フリーでソフトウェアエンジニアの仕事をしていることもあり、5年ほど前からブロックチェーンの話は目にしていました。しかし、具体的に何が凄いのか全く理解できず、勉強会に参加しても理解できませんでした。


プログラムをきっかけとして色々学んだ結論としては、結局ブロックチェーン自体が実際何が凄いのか、本当に凄いのか自体まだ分かっておらず、誰も理論立てて説明が出来ないため、誰にも分からないのは当然だと判断しています。


4. 参加してみて

まだ専門的に分業化されていない研究分野だと思いますので、既存研究や技術提案もかなりの玉石混交だと感じました。そもそも研究分野として成立しているのか、技術提案が実際に合理的なものなのか自体怪しいと感じていました。


しかし、茂木先生や芝野さんとディスカッションをすること、またプログラムの課程で「意味のある」ブロックチェーンプロダクトを構想する内に、かなり理解が深まったと感じています。特に論文を読んで議論する時間は、数学よりの議論相手が今まで居なかった私にとってかなり有益でした。この技術に関する私の結論は、実はブロックチェーンが凄いのでは無く、

  1. ビットコインにおいて「分散」「非同期」「ビザンチン障害のある」合意形成プロトコルに対して、合意形成有無を{0,1}の2択ではなく、[0, 1]の連続値を取る確率に緩和したこと。

  2. この緩和によって、非同期の合意形成プロトコルがいくらか実用的になったこと。

  3. この確率への緩和は、経済的インセンティブの設計、即ち通貨の鋳造によって引き起こされていること。


という上記3点がビットコイン(~ブロックチェーン)のイノベーションだと考えています。後の提案は、このナイーブな仕組み自体をどのようにより高度にするか、といった改善提案だとして差し支えないと考えています。


ブロックチェーンに類する仕組みは、同期的で、攻撃や故障が無いケースでは、ハッシュチェーンを用いたタイムスタンプサービスとしてビットコイン以前に提案されています。また、非同期の合意形成アルゴリズムについてはかなりの量の研究結果があります。つまり、ハッシュチェーンを用いていたり、非同期分散であるということ自体はさほど目新しいものではありません。


5. 関連分野の幅広さ

ひとたび所謂"ブロックチェーン"自体のイノベーションが通貨の鋳造による非同期合意形成問題の連続値緩和であることを飲み込んでしまえば、その制約を考慮した上でいろいろな応用を考えることが出来ます。しかし、ブロックチェーン業界の実態としては、上記を認識しているかどうかに関わらず、その実用性が未検証であるような玉石混合の様々な提案があり、それぞれのプロジェクトが実際にソースコードを書いて実証実験を行っているものだと認識しています。


”ブロックチェーン”周りの技術を理解しようとすると、以下の分野に触れる必要があります。

  1. 現代暗号

  2. ソフトウェア開発スタック(通信プロトコル、データベース、開発・実行環境)

  3. P2Pプロトコルスタック

  4. 分散合意形成プロトコル

加えて、現在周辺でホットな話題をフォローしようとすると、上記以外のサブ分野の知識も必要になります。例えば、

  1. 秘匿計算

  2. 耐量子暗号

  3. 形式検証

  4. メカニズムデザイン

  5. ゼロ知識証明プロトコル


私にとってはどれも非常に興味深い分野だったため、視野と今後取り組める分野が広がってとても良い経験になりました。


6. プロジェクトについて

「意味のある」ブロックチェーンプロダクトを、ということで考えたのは、トラストレスな状況下(経済的インセンティブが無いと互いに自分の利益のために騙し合うような環境下、逆に言えば十分な経済的インセンティブを与えればそれに従って動く確率が高いと想定される環境下)で計算を秘匿・プライバシー保護状態で委託するプロトコル。特にパブリックチェーン(トラストレスなブロックチェーン)上で、プライバシー保護・秘匿機械学習の学習・推論を行うプロトコルで、


  1. ウォレットをPDS(プライベートデータストア)として、差分プライベートなデータ提供によって、プライバシー侵害を受けずに対価としてトークンを得るデータオーナー

  2. 完全に暗号化、難読化、ノイズ付与されたデータからの学習・推論を行うことで、データに関する情報を得ること無く計算の対価としてトークンを得るマイナー

  3. それら保護されたデータを利用して機械学習モデルを学習するモデルオーナー

といった3パーティーが主体として形成されるエコシステムです。現在は、自分の研究で時間が取れていないのでプロジェクト自体は一時停止していますが、研究がまとまり次第再開したいです。



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